愛のかたち
『原口さん、すみませんでした。少しだけ・・・夢見させてもらいました。』


『なぁ、矢野さんは・・・どういう関係??』


愛子ちゃんのことだ。

わたしも・・・気になってた。


『愛子は日本人ですよ。俺の国籍のことも全部知ってます。あいつは住んでいる家の親戚、俺とはなんのつながりもない奴です。あいつまでそういう目で見ないでください。』


『そっか。いや、そういう目では見てないけど気になっただけ。』


『咲貴、ごめん。痛かっただろ?俺バイトには明日から行かないから。俺の事はもう忘れて。原口さんがきっと忘れさせてくれる。』


そう言ってわたしの髪に触れた。


『俊、嫌だよ。嫌だよ。わたし忘れることなんて・・・出来ない。』


触っている俊の手にわたしは触れた。


冷たい、まるで氷のよう。


『咲貴、よく考えろ。俺たち、うまくいかないんだ。俺はきっと韓国籍の人とじゃないと親には紹介なんて出来ない。咲貴の親は俺を紹介したときに日本人だと思い込む。国籍って関係ないなんてないんだ。大きな・・問題なんだ。俺が我儘だったばかりに咲貴に辛い想いさせてしまって・・ごめん。もう俺はお前のことを忘れる。キレイさっぱり忘れる。これ以上会いたくない。』


だめ・・何か言わなきゃ俊は去っていく。

でも・・・体が口が動かない。

会いたくないって言われたこと、忘れると言われたことがショックで。


『元気で。原口さんも、気付かせてくれてありがとうございました。あとはよろしくお願いします。』


そう言って深く頭を下げた。

頭を・・なかなかあげない俊。


わたしは俊のところに走ろうとした。

でも・・孝浩くんに止められる。

抵抗しながら


『離して!!俊、泣いてるんでしょ?ねぇ、別れたくないんでしょ?じゃあどこかに逃げようよ、2人で!!離れてなんていられ・・ない・・・。』

最後のほうは涙でうまく言えなかった。

それでも俊はまだ頭を下げたまま動かない。

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