ねぇ、僕じゃダメ?
式の準備をするためと、仕事終わりに実可子が訪ねてきた。

アポなしで来たことなんかないのに。

「どうした?連絡なしで珍しいな」

「うん、急に思い立ったから。それに時間あるときに色々決めなきゃだし。」

「そっか。ご飯は?」

「済ませてきた。尊は?」

「僕も食べたよ。コーヒーでも飲む?」

「うん。」

いつも通り。

大丈夫。何も気付かれてないはず。

コーヒーを淹れながら、ふと桃田さんの声を思い出した。

少し鼻にかかる甘い声。

あ、ダメだ。危ない危ない。


「尊さ、本当にいいの?」

「、、、?なにが?」

「うん、だって、あの式場、あんまり乗り気じゃなさそうだったから」

「あー、まあ、他にも見てから決めてもいいんじゃないかと思っただけだよ。本当にそれだけだから。」

「それだけなら、良かった。」




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