焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新

「名前?」

「……そうだけど。知らないの?」

言われてみれば、成宮さんの下の名前はまだ知らなかった。

「じゃあ、成宮さんの誕生日とか、好きな食べ物とか。ほかに知ってることは?」

「えっと……鮭より梅派?」

「何よそれ」

琴美に質問されて気づく。

あれ、私、成宮さんのこと知らなすぎ?

「ねぇ和花菜」

琴美がお弁当箱から卵焼きをパクっとつまみ食いする。

琴美のつまみ食いはいつものことだから気にしないけど。

「私たちの仕事、特に和花菜のいるアカウントプランナーってさ、常に相手のことを考える仕事でしょ」

その通りだ。

『アカウントプランナー』

そう呼ばれる私たちが広告を出稿したいというクライアントとの打ち合わせやコンペ、広告が出来上がるまでの一連の流れを管理する。

その過程で、琴美がいる広告の具体的な戦略を立てる『ストラテジスト』や他担当とやり取りをしていく。

だからクライアントはどう思うか、とかこの広告はターゲット層に響くか。

他担当はどう考えるかとか相手を最優先で考え続ける仕事だ。

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