藍と未来の一つ屋根の下
「キスしてみない?」
「おまえ今日何時までいるの?」


学習机の椅子に座って漫画を読みながら藍(あい)が聞いた。


「今日かずオッちゃんと日本代表選観る約束してるんだよね」


ベットに寝そべって漫画を読みながら未来(みくる)が答える。


「おまえ暇なの?」


「息子が一緒にサッカー見なよ」


「俺は部屋でいい」


「親不孝」


「おめえが言うなよ」


「藍、ポテチとって」


「自分でとれよ。てゆうかお前そこどけよ。俺が寝られねえだろ」


そういって藍は机に置いてあったポテトチップスの袋を未来に投げた。


「いったーい」


未来がポテトチップスの袋を開けると、藍は椅子を立って未来の横に寝そべる。


「どけ」


「ちょっと狭いじゃん」


「俺の部屋だろ」


「藍も食べる?」


「俺のだよ」


「買ってきたのばーちゃんじゃん」


「うるせえどけ」


ポテチの袋が空になると未来は狭いベットの上で仰向けになった。藍が小学生の時からこの部屋にあるベッドは、体制を変えると少し軋む。


「藍は進路決まった?」


「N高じゃね?」


藍は相変わらずうつ伏せで漫画を読んだまま答える


「N高遠いじゃん」


「オヤジの希望」


「私はS高かなぁ」


「なんで?」


初めて藍が未来に顔を向ける。
見慣れた未来の長い睫毛が藍の目にとまった。


「家から近いじゃん」


「ふーん」


「家事しないとだし」


「ばーちゃんに頼めよ」


「うちの家事まで頼めないし。これ以上迷惑かけられないでしょ」


「ばーちゃんはそんなこと思ってねえよ」


この10年、この会話を一体何回したことだろう。


「離れちゃうのかなぁ」


未来の言葉に、2人の間に一瞬間が空いたように静かになる。
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