藍と未来の一つ屋根の下
田村からまっすぐ向けられた視線は未来の胸の鼓動を早くする。

「えっと…私ママの帰りが遅くて、家の手伝いとかしないとだから、そういうのとか考えられなくて…」

「でもこうやって一緒に帰ったりは出来るでしょ?」

イケメンの彼氏とか欲しいよねって、最近アリサや友美とよく話す。

バスケ部で一番かっこいいと噂されている田村先輩から告白された。


どうして、嬉しくないんだろう



未来はそれ以上どうしていいかわからず、下を向いたまま声が出なかった。

「あーごめん、なんか困らせちゃったよね」

「大丈夫、ゆっくり考えてよ」

そう言ってニッコリ笑った田村先輩はとても優しそうだった。

「家まで送るよ」

「はい…」

ゆっくり考えて…か。
日が長くなった5月の夕空を見ながら、未来の胸は少しドキドキしていた。

藍の部屋に知らない女の子がいたのは、その一週間後だった。
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