藍と未来の一つ屋根の下

「ただいま」

《家庭保育施設 お星さまのおうち》
と書かれた小さな看板がかけられた玄関を入ると、3人の園児が一斉に「おかえり!」と叫んで走り寄ってきた。

「たっだいまー!ゆーま、なみこ、ここあ!いい子にしてたかー!?」

「ミク姉、あそぼ!」

駆け寄ってくる3人をいつものように抱きしめると、すぐにてる子ばーちゃんがやってくる。

「ミクちゃん今日は早かったね」

未来が「お星さまのおうち」に通い出した3歳の時からばーちゃんの笑顔は変わらず未来を安心させる。

「今日部活ないから」

「ご飯まで待っててね」

「はーい」

「お星さまのおうち」保育の預かり時間は本来18時までと決まっている。

しかし未来は水商売でママの帰りが遅いこと心配されて、ばーちゃんから保育時間外での面倒を見ることを提案された。

保育の時間が終わってから「プライベートで」夕飯まで一緒に食べるうちにいつのまにか青山家で食べるのが普通になってしまった。

当初ばーちゃんの息子のかずオッちゃんは「他人の生活にそこまで介入するべきではない」と反対だったらしい。

でも今では「娘ができた」と、すっかり家族の一員として受け入れている。

当時引っ越したばかりで保育園が決まらず困っていたというママは、ばーちゃんが神様に見えたとよく話す。

保育部屋を通り過ぎて住居スペースのキッチンに行くと、お鍋に煮物の作り置きがある。

鶏肉をつまんで口に入れると、未来は階段を上がって二階に行った。

藍の部屋にはまだ誰もいない。

カバンから教科書を出すと、藍の机で未来は宿題を始めた。

藍が帰ってきたらどけと怒られるから今のうちだ。

そう言えば一階からお菓子取ってくるの忘れた、と未来が立ち上がろうとしたとき、一階から声が聞こえた。

「お邪魔しまーす!」

何人かの声が聞こえ、バタバタと階段を上がってくる音が聞こえる
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