藍と未来の一つ屋根の下
「藍」

「なんだようるせえなぁ」

「お風呂はいってきた」

「だからなんだよ」

「一緒に寝てくれるって言ったじゃん」

シャープペンシルがノートを走る音が止まった。
未来が寝転んだまま藍の背中を見ていると、手が止まった藍が未来を振り返る。

藍の切れ長の目が未来の二重の大きな目を見ていた。

藍が立ち上がってベッドに座る。そのままじっと未来の顔を見下ろした。

「なに…」

「おまえ」

藍が大きく息をついた。

「化粧してない方がいいよ」

「どスッピンなんですけど」

「そっちの方がいいよ」

「藍はスッピンの方が好き?」

「化粧が似合わねえって言ってんの」

「じゃあ藍と会うときは化粧しない」

「はいはい」

階段の下からばーちゃんの声が聞こえた。

「ミクちゃん、藍くん、お茶取りにおいで」

「ミクー!サッカー観るぞー!」

和夫の声が続く。

「はーい!今いきまーす!」

未来はベッドから勢いよく起き上がるとそのまま藍に抱きついた。

藍は何も言わなかった。

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