さよなら、Teacher
「ごめーん。
恵に悪いとは思ってたんだけど、大翔、優しいし、カッコイイし。エッチだって上手いし!
誕生日にさぁ、ホテルのレストラン予約してくれて、ダイヤのネックレスくれたし…」

恵には飲食代からホテル代まで全て支払いさせたくせに、未亜にはそんなことをしているなんて。


「大翔、未亜の事が好きなの?」

恵は、直球の質問を投げた。
大翔は、ふん、と鼻を鳴らし、傍らの未亜を見せつけるように抱き寄せる。


「当たり前だろ?
未亜と自分、比べて見ろよ。

まぁ恵は、真面目だからな。レポートとか課題の手伝い、本当に助かったよ。
でも、もういっか。あと半年もしたら卒業だからなぁ。


お前だっていい思いしたろ?
俺と食事をしたり、エッチもしてもらって。

お前みたいなダサい女。俺がいなきゃ、永遠に処女だぜ。
有り難く思えよ」




あまりに悔しくて、涙も出ない。自分が惨めだった。


恋人と友人を一度に失ってしまった。
いや、もっとずっと前から恋人も友人も無かった。
気づかなかったのは、知らなかったのは、自分だけ。

彼の為に、彼の喜ぶ顔が見たくて、自分の生活費を切り詰めてまで、彼に尽くしたのに。



「行こうぜ、未亜。
恵、じゃあな」



恵に見せつけるようにぴったりと体を寄せ合い、未亜と大翔は雑踏に紛れていく。



恵は、しばらくその場を動けなかった。
駅前なので、人が溢れている。見知らぬ人々の作る流れは、恵の孤独感を一層かきたてた。
しかも、辺りはみるみる暗くなっていく。




恵は脱力した体を引きずるようにして、ヒロの家に向かって歩き出した。

恵を待っている人がいる。

それだけが今の恵を支えていた。




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