さよなら、Teacher
ーあぁ。まさかこんな場所で、こんな出会いがあるなんて。


恵の顔色は真っ青で今にも倒れそうなほどになる。

「メグ、どうしたんだよ、大丈夫か?
ヒデの彼女、一体何を騒いでるんだよ、
メグに何したんだ?」

英語の聞き取れないヒロは、兄をにらみつつ
恵の肩を抱いて背中を優しくさする。


「失礼いたしました。ヒロ、大丈夫よ」

平静を装いながら、恵は笑みを作った。


「キャサリンさんのお知り合いは、多分、私の姉です。それで驚いてしまいました。
“モデルのアユミ・ワカツキは私の姉です”」

英語を交えながら、恵はそれだけ言った。


「メグ、お姉さん居たんだ…」

「なんだ、ヒロ。お前付き合ってるのにそんな事も知らなかったのか」
秀則に突っ込まれ、ヒロは少しふくれてコーヒーを飲み干した。

「メグ、あんまり自分の事、話してくれないから」

「…ごめんなさい。
きょうだいは姉が1人。でも、歳が10歳離れていて私が小学生の頃に家を出て行ったので…」
恵は、言葉を濁した。



ー恵、お姉ちゃんなんて呼ばないで。私、この家とは一切の縁を切ったの。

ーそんな…イヤだよ、お姉ちゃん!



ー さよなら、恵。



小さな恵の手を振り払って飛び出していった姉の姿を思い出す。地元大学への進学を蹴ってまでスカウトされたモデルになるんだと、上京して行った姉。
それからというもの、実家で姉の話はタブーになった。

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