寂しがり屋の月兎
第二章
放課後の学校、人気のない廊下である。

怯えた顔の少女──満は、数人の女子生徒に囲まれていた。

『調子に乗らないで』

『新くんは優しいから、あんたなんかにも構ってくれるのよ』

『思い上がって勘違いして、恥ずかしいよね』

どす黒い悪意しかない言葉を、いとも簡単に彼女たちは放り投げる。

どうして──と満は思う。

どうして容易く、人を傷つけることができるのか。

涙が出そうになる。

彼女らが恐ろしいからなのか、不条理に憤っているからか、不甲斐ない自分に対してなのか──。

必死でこらえた。目の前を睨むようにする。

負けるわけにはいかない。

手のひらに爪を立てた。

すうっと息を吸い込む。

凛々しく穏やかで、強いあの人に、釣り合う自分でいたかった。
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