宝石姫と我が儘な教え子
え…?
あまりにもノープラン過ぎる意見に椅子から転げ落ちそうになった。


「その『想像もつかぬ方法』を教えて欲しいから聞いてるんだけど…?」


「ふぉっふぉっふぉ、私ごとき浅学では知りようもありません」


シャトヤンシーは呑気な様子で髭をもてあそんでいる。アドバイスをくれる気はないらしい。前途多難に気が遠くなり、よろよろと立ち上がる。


「分かったわ。とりあえず、何も分からないってことが…」


帰り際、スフェーンに「少なくとも数日は安静に過ごして下さい」と釘をさされた。


「そうは言ってもね、できることから試してみないと始まらないし。

体なら大丈夫だよ。向こうでの暮らしに比べたらびっくりするほど身体の調子が良いんだもん。」


「ご自覚はなくともお身体には疲れが溜まっておられるのです。姫様は予定よりずっと長く、7日も旅をされていたのですから…」


「えぇ!?たった7日だったの?」


口を挟むとスフェーンは大げさに眉をしかめ る。


「たった7日と安易に考えて頂いては困ります!

こちらと異界との間には時の波があるため、姫様の体感とは違うのでしょうが…これ以上旅が長引けば、姫様はお帰りになれない危険すらあったのですよ」


「そ、そうなんだ…」


予想外にお説教が始まりそうだったので早々に撤退して寝室に籠ることにした。私が日本で過ごしたのは22年以上なので、時間の感覚はかなりずれている。これがスフェーンの言う『時の波』の影響なんだ…。


不思議だなと思うけれど、今はそれどころじゃない。考えなくちゃいけないのは、山を鎮める供物をどうやって手に入れるかだ。
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