宝石姫と我が儘な教え子
いい香りがする。



花の香りだろうか、甘さの中に草木の瑞々しさが混ざっている。眠気に逆らって薄く目を開けると、上から花びらがひらひらと落ちてくる。一つ一つが内側から淡く発光し、頬に落ちた花弁はひんやりと濡れていた。


「バラ…?」


思わず地球上の植物の名が口をついて出る。こんなふうに淡くてツンとしたピンク色の花は、グランディルライトでは見かけたことがない。


最初は花びらが落ちてきたのが、次第に空中に花が浮かぶ。ついにはあたり一面に溢れんばかりに咲き乱れ、寝台から床にまで広がっていた。


「…っ!」


花に気を取られていたら、唐突に、背中越しに重みのある温かさを感じる。まるで人の体温のようなその熱源を恐る恐る振り向くと、本当にヒトが潜んでいた。


「曲者!」


巫女を廃して代替わりを狙っているの…?命知らずめ、すぐに後悔させてやる。


ペンダントにしている護身用の宝玉を握り全身殺気立てて見下ろすと、くうくう、すやすやと場違いに呑気な寝息が聞こえる。


ね、寝てる…?


「なんなの…?」


油断していたら腕が伸びてきた。緩慢な動きのわりに、力の強い腕に絡めとられる。


「ん…瑠衣…?」

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