宝石姫と我が儘な教え子

いつだって瑠衣は、俺が会いに来るのを止めさせようとしていた。彼女はこの雨で俺を追い返そうとしているのかもしれないが、俺の知ったことではない。


「瑠衣のせいで、むくれた顔ばっか思い出すよ」


大雨に打たれて全身がずぶ濡れだ。もっとも、頬が濡れているのは雨だけが原因ではなかった。濡れた地面に膝をつき、墓石に触れた手も泥にまみれる。

いっそのこと墓を掘って瑠衣の隣で眠りにつきたい。そのまま永遠に目覚めなくても良いから。


どうか、瑠衣を返して






項垂れたまま花束を眺めると、包装紙が土で汚れていた。汚れているくらいなら無い方が良いだろうとリボンを解く。


「花が、枯れてる…?」


買った時には鮮やかな大輪のバラだったが、どの花も見る影も無いほどくすんで乾いている。


車の中が暑かったのだろうか?もしそうだとしても、一時間も絶たずに花が枯れるものだろうか。不思議に思いつつ花束を持ち上げると、墓石に置いたときとは比べ物にならないくらいに軽くなっていた。水気が無いのだ。試しに一輪のバラを軽く握ってみると、粉々に朽ちて地面に落ちる。


「変だな…」


瑠衣ならこの不可思議な状況を説明してくれるだろうか。乾いた花束を胸に抱いて、教師だった頃の彼女に思いを馳せた。
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