秘密にしないスキャンダル
歌い終わって一度目を閉じるとすぐにそっと目を開ける。
陽人がMCとして話しているのを横目に勇菜はライブ前に堀原から言われたことを思い出していた。



「クランクアップの打ち上げ、ですか?」

それは隆矢が主演の映画がついに今日クランクアップするという知らせだった。
その打ち上げに主題歌を引き受け、いろんな番組やライブで歌いながらしっかり映画も宣伝してくれたということで監督から直々に招待を受けたのだった。

「打ち上げにShineが来るのは誰にも言っていないらしい。
言わばスペシャルゲストだな」

「おお……芸能人みたいですね」

「一応芸能人なんだけどな」

「監督が言うには、一ノ瀬隆矢の役作りのためとは言え二人に寂しい思いをさせた罪滅ぼしもあるらしいぞ」

「罪滅ぼしなら隆君からの伝言を私に一切伝えてくれなかったハルトがするべきです」

真顔でそう言うと陽人は、おかげで良い曲が作れたじゃん。と悪びれる様子は一切ない。
知ってはいたけど本当にこの兄はたまに鬼畜なところがあると勇菜はじとっと陽人を睨み付けた。
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