Love Eater



ソルトがいくら一時の痛みだと思っているものでも、それを六花が把握しているわけじゃない。

魔女である事が恋の妨げになっているなんて知る由のない六花からすればソルトの方から決別されたと言っても過言じゃない。

寧ろ、そう受け取ったのだ。

魔女である自分を追う事をリタイアした。

魔女である事でソルトとの繋がりを信じて嬉々としていた六花にとっては、あの肯定の言葉ほど残酷な物はない。

それをソルトも分かっていた筈であったのに。

あの瞬間、六花の一途でいじらしい恋情より自分の欲求の方を優先してしまったのだ。

それも、神父だ魔女だと大義名分な理由まで自分に唱えて後ろめたさを覚える本来の自分まで踏みにじって。

結果、最悪な形で六花と決別してしまった。

「……はぁぁっ……嘘だろ?」

こんなつもりじゃなかった。

ただ、当たり前に触れたかった。

名前を呼んで、撫でて、抱きしめて…。

六花の物になってやりたかった。

六花を自分の物にしたかった。

ただ、下手な言い訳もなく両想いになりたかった。

それだけなのに……。

俺……何してるかな。

そんな後悔に浸ろうが一人きりの反省会にすぎず。

どんなに期待を持って夜空を仰ごうが子憎たらしい魔女の姿が飛んで来る筈もなく。

この夜を境にソルトの悶々としていた溜め息は別の苦悶に色を変えて増加していったのである。




さてさて、迷える神父様に赦しの光は見えるのか…。



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