Love Eater




そうして、何事もなかったかのように立ち上がり、スカートの裾を直しながら狙撃者を振り返ると一言、

「遅いよ、ダーリン」

「誰がダーリンだボケッ。寝言は寝て言えっ」

「えっ、……そんな、会ってそうそうにベッドのお誘いとか……、うん、嫌いじゃないよ。会う時はちゃんと勝負下着で来てるから」

「誘ってねぇ。何頬染めて恥じらって見せながら親指突き立ててんだ?もう一発いっとくか?」

男が苛立つのも当然なのだ。

この少女、散々待ちわびた様な自己陶酔極まりない言葉を連ねた癖に、表情と言えば言葉ほど感情を揺らさずの無表情の淡々口調。

そりゃあ、男からしたらからかわれている様にしか感じられないのだ。

そもそも、放った銃弾がかわされた事も苛立ちの一つ。

避けられなければ確実に少女の身体を撃ち抜いていた筈で。

今も尚その銃口は少女に狙いを定めていると言うのに、彼女と言えば微塵も怯む様子なく、なんならその眼差しはどこか恍惚しても見えるのだ。

本気なのか冗談なのか。。

それでも、少女の長い睫毛の下、光の加減で宝石の様に深みが変わる淡い水色の双眸はまさに言葉のままの好意を揺らして男を捉えても見える。

そんな少女にどんな敵意や攻撃色を見せても無効。

狙撃者の男自身それを分かりきっているからこそ緊張感が張らないこの空気に虚しさの溜息を吐いてしまうのだ。

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