Love Eater

真夜中のとある部屋の浴室では一人の男の苦悩に満ちた無言の戦いが始まっていた。

「さっきまで大暴れしてたのに随分大人しくなったねえ。いいこいいこ」

『……』

「別に取って食うつもりじゃないんだから恐がらなくていいのに。……って、あはは、大人しくはなったけど目しっかり閉じちゃって。大丈夫だって水かけたりしないのにぃ」

『いや、寧ろ目を開けたら取って食っちまいそうなのは俺の方なんだよボケェっ!』

どんなに喚いて抵抗しようが狼に変化してしまったソルトの訴えは六花に微塵も伝わらず。

結局ズルズルと風呂場に引き込まれてしまった瞬間に、自ら視覚を閉じるという抵抗の仕方に切り替えたのだ。

一緒に入ると言うだけあって当然六花も衣服を脱ぎ捨ててのこの時間。

ソルトだって成人した普通の男だ。

こんな異常な興奮状態でなければ意中の相手の裸とあればラッキーくらいの感覚で眺めていた事だろうに。

見なければいい。

そう見なければまだ多少この苦境をやり過ごせる。

そんなソルトの苦悩も知らず、六花と言えばただご機嫌にボディソープの泡をソルトの身体に乗せてくる。

まだ呪いの効果継続の興奮状態。

ソルトからすればそんな些細な接触さえ確実に欲を掠める拷問の時間。

それでも暴れる様な抵抗をやめたのは体力的の消耗的にも無駄だと思ったから。

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