稲荷と神の縁結び
それに仕事には、まだ慣れていない。
本部に移動し、直属の上司が有沢さんと…その上が社長である清貴さん。(会社の規模的に、間にもう一人か二人いても良いと思うのだが)
清貴さんとまた一緒に仕事をすることになったのを喜んだのは最初だけで……ここ一年で随分変わってしまったのを目の当たりにした。

あの頃は、まだ彼の本性が現れていなかった時期なのだろうか。
仕事の鬼と化した清貴さんは清様とは違う切り口で、うちの大幅改革やら事業の編成などをくまなく行い、随分と成果を上げていた。
そして文字通り『仕事の鬼』と化した彼は、一つも笑うことは無くなっていて…あの端正な容姿と合わさった結果『君主様』とひっそり呼ばれるまでになっていた。
もうあの頃の爽やかな青年の影は何処にもなく…私達が過ごした日々は幻だったのではないか。そう思う程だった。


(せめて夕湖ちゃんのつわりが良く…いやいや妊婦を働かせるわけには。出張も頭に無かったし…もうちょっと母さんにコマ数調整してもらおう………)

そんなこと思いながら、フラフラと歩いていた。
< 151 / 233 >

この作品をシェア

pagetop