稲荷と神の縁結び
私から見れば…「清様も、清貴さんも……馨様のことがすごく好きなように見えますが…?」と言うと、馨様は肩を竦めた。
そして「昔の話だよ」と前置きをして、馨様は若い頃の話を始める。
「私はね、貧乏な田舎の農家の産まれで…駆け落ち同然で、妻と二人で田舎を飛び出してきたんだ。二十歳にもなっていない頃だったね。
二人で田舎を飛び出して、 二十歳になってすぐ入籍をして…子供を授かって。君の年齢の頃には、私は妻子を食わせるのに必死に働き、妻は子育てに追われていた。私は昼夜問わずに働き…随分と妻や子供達に、寂しい思いをさせていたと思う」
目を細めながら…懐かしむように喋る馨様。
穏やかな顔つきで…亡くなった奥様を思っているのだろうか。
「ようやく息子も結婚し、孫が産まれて…ゆっくりできると思っている間に、妻は亡くなってしまったよ。
だから、死ぬのは怖くないんだ。妻が待っているからね。もう二十五年も待たせている」
テーブルの上で、手を組む馨様の左手薬指には‐プラチナのリングがある。
そして「昔の話だよ」と前置きをして、馨様は若い頃の話を始める。
「私はね、貧乏な田舎の農家の産まれで…駆け落ち同然で、妻と二人で田舎を飛び出してきたんだ。二十歳にもなっていない頃だったね。
二人で田舎を飛び出して、 二十歳になってすぐ入籍をして…子供を授かって。君の年齢の頃には、私は妻子を食わせるのに必死に働き、妻は子育てに追われていた。私は昼夜問わずに働き…随分と妻や子供達に、寂しい思いをさせていたと思う」
目を細めながら…懐かしむように喋る馨様。
穏やかな顔つきで…亡くなった奥様を思っているのだろうか。
「ようやく息子も結婚し、孫が産まれて…ゆっくりできると思っている間に、妻は亡くなってしまったよ。
だから、死ぬのは怖くないんだ。妻が待っているからね。もう二十五年も待たせている」
テーブルの上で、手を組む馨様の左手薬指には‐プラチナのリングがある。