稲荷と神の縁結び
「一応こはるも…有沢さんも一番頼りにしてるんだから。
今、彩馨は他の事業に手を出したいらしくてな。その為にフォト事業部を引っ張りたいって噂。
俺の耳に入るのは外堀埋めてからだろうから、警戒しといてくれ」

最近どうもこの人とうまく行ってなかった気がするが、ちゃんと私達は頼られていたらしい。それはそれで、まぁ嬉しいことである。

「わかりました。できる限り頑張りますよ」

「内緒な?この話」

「はい、なるべく内緒にしておきますね」

真面目に答えながらも、どうしてもクスクス笑ってしまう。そんな私を、清貴さんは邪険そうに見つめている。
やっぱり信用ならん…という目。

まぁせっかくなので、それを利用して「デザートで買収されますね」と宣言してみた。
清貴さんは呆れ顔で「いいぞ、俺のもやる」と言って、呼び鈴を押して店員さんを呼んだ。


(狸じじいって……)

清貴さんもそう思っていることがなんだか可笑しくて…。
本当のところ大声で笑いたいところだが、それは喉の奥にぐっと押し込む。


実を言うと、清貴さんに内緒にしておきたい話があるのだ。
私と有沢さんは、清貴さんと清様の親子の争いを、こう呼んでいる。



『狐と狸の化かし合い』と。


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