冷やし中華が始まる頃には
「え、なんで…」
「なんでって、こっちがなんでだよ。」

笹崎が低い声で答える。

「いやー、かわいいかわいい峯岸くんの作品を見に来たら、まさかここに門野さんがいるなんてねー。」

ならはギョッとする。
笹崎は、ならの方を見ることなく猛の作品を手に取る。

「峯岸くんの、売れましたか。」
「今のところまだですね。見に来る方は数名いましたけど。やっぱり実用性に欠ける上に値段設定も高めだから、簡単には誰も買いませんよね。」
「いや、でもむしろ全国的には欲しい方いると思いますよ。こういう小さなマーケット向きじゃないだけで。」
「そうですねー、問い合わせのメールは全国から頂きますね。」

呆然と突っ立ってるならを置いて、2人は猛の作品作りのことで話し込む。

「すいませーん、私、帰ります。」

ならが小声で2人に向かってそう言うと、峯岸が立ち上がった。

「はい、あの、連絡、待ってます!」

勘違いさせるような言葉に、ならも笹崎も表情が固まる。

「ああ、はい。では。」

ならは当たり障りのない返事だけをして、その場を立ち去った。

一体笹崎はどう思っただろうか。

そもそも私があの場にいただけで相当怪しまれたに違いない。

しかもデートの誘いを断っといて・・・。
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