冷やし中華が始まる頃には
2人はその後もダラダラと話しながら店を変え、0時くらいまで飲み続けた。

別れ際に、笹崎が「今さらですが」と切り出す。

「俺たち同い年っすよね。もう友達で良くないですか。」

峯岸も「ですよね。」と笑った。

「それと、」と笹崎が思い出したかのように言う。

「俺、誰かを想って作られた作品ってすごくいいと思うけど。」
「えっ。」
「じゃっ、俺こっちなんでー」

一瞬何のことを言われたのか分からずにその場で固まっている峯岸を置いて、笹崎が手を振ってその場を去っていった。

峯岸はならに別れを告げてからモヤモヤしていた情緒が、少しスッキリとしていることに気付いた。

ああ、俺は別れた日から全然前に進めてなかった。

峯岸は自分の今の状態をやっと見つめることができた。
< 52 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop