バックステージ☆

甘い戸惑い

蒼ファンである私は、私の本名・華として、蒼くんの胸に刻まれた。

その出来事は、私の心の中で、ころがる鈴のように音を立てて、私の気持ちを弾ませた。

けれども、蒼に嘘をついてしまったという後悔は、私の胸に重く垂れ込めて、ため息に変わった。



そんな思いに気持ちが揺れていても、仕事は容赦しない。


新曲の売れ行きは順調で、トップ10入りを果たした。

追い討ちを掛けるようにプロモーションは進む。


昼のトーク番組で、宣伝をかねてゲスト出演した。

同じゲストで優成が呼ばれていた。


スタイリストさん、へアメイクさんと打ち合わせ、私は髪をアップにして、薄紫のミニのワンピースに、ニーハイブーツ、ファーの小物を合わせることにした。

ポンちゃんは衣装にとてもうるさく、まるでスタイリストさんが二人いるようだ。


「かーや、最近、キレイになった」

感慨深そうにポンちゃんが呟き、背中をぽんと叩いて収録スタジオに送り出してくれた。


スタッフさん、出演者に挨拶し、ポップなリビングに見立てたセットのソファに座った。

隣には優成が座り、マイクを胸にセットしていた。


収録が始まる。

トークが苦手な私は、あらかじめ用意したことを話すほかは、笑ってうなずくだけ。

肩肘張らずにおしゃべりする優成に調子を合わせて、笑ったり、感心したりしているのがほとんど。


けれど、優成もさすがはこの道のプロ。


「兄妹みたいに打ち解けてます」

と、私との関係を話したけど、私と隣り合わせで蒼のライブを見た、など、探られそうな話は一切しない。

スキャンダルの無い優成だけど、プライベート恋愛沙汰も多いと聞いている。

人懐っこい接し方、ハリウッドスターのように鍛えて、細い筋肉で引き締まった、ずば抜けた容姿、大人らしい身のこなし。

女性たちが放っておくわけがない。

器用に人知れず、思うままに私生活を楽しんでいるというのは、後輩達の中では専らの噂だ。


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