バックステージ☆

涙の分だけ君が好き

相性がいいのは、声だけ?

同じ曲を演奏したいと思ったなんて、そんな偶然て、あるだろうか。

考えてることも、もしかしたら似ているのかもしれない。

それに、演奏している間の、あの、このうえなく落ち着いた、あったかい空気感。

普通は初対面であんなふうに打ち解けることはできない。


もっと蒼を知りたい。

そう思った。

彼を知るほど、何か近いものがたくさん感じられるような気がした。



その日から蒼のことが頭から離れなくなった。

彼と会ったあの時が、なにかの運命だったらいいのに、と、心のどこかで願っていた。


運命なのなら、きっとまた、いつかめぐり合うチャンスがあるにちがいない、

そう思って、行く先ざきで、偶然蒼の姿に出くわすことができるんじゃないかと勝手に期待した。


テレビ局の歌番組の収録、

街中のラジオの公開録音スタジオ...

話題になってるカフェや、

穴場のカラオケ。

蒼のすらりと背の高い、さらさらした少し長めの髪が風になびく姿を探した。

それから私は、どこへ行っても、

やたらキョロキョロするようになってしまった。
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