キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 隣に並んだ長身の楓を見上げて、キッと睨む。朝の居心地の悪い視線に苛立っていたので、半分は八つ当たりだ。

「ま、うまくいってよかったじゃん」

「うっ」

 楓に背中をバシッと叩かれて、うめき声が出た。

 “力加減してよね、バカ力”という喉まで出かかった文句は、結局言葉にならなかった。

「うん、ありがとう」

 どこから偽装カップルのことがバレるかわからないので、親友のふたりには本当のことを話してない。スマートフォンのメッセージアプリで【OKもらえました】というメッセージだけを送って報告をした。

 つまり、うしろめたさがあるせいか怒れない。

「なんだよ、お前のことだから超うれしい~って、叫ぶと思ったのに」

 “超うれしい”のところだけ裏声なのは、私の声真似? 全然似てないけど、さすがは親友。私の様子がおかしいことに目ざとく気づく。

「あはは、これでも小躍りしたいくらいにはウレシイヨ」

 感情がこもってない、棒読みじゃん、私! 

 でも、そんなこと言っても仕方ないじゃないか。私だってさ、純粋に告白が受理されたなら両手を上げて喜んでたよ。けど今は〝偽装〟という言葉が心に引っかかってる。うれしさ半分、虚しさ半分ってところだ。

 初っ端から楓に怪しまれてるようじゃ、美代になんて速攻バレそう。

    

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