キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「うん? なにか言った?」

「なんも言ってないよー」

 聞き返してきた美代の笑顔が怖かったので、ごまかす。
 という感じで、三人ともまったく別のタイプだけれど、高校一年生のときからずっと一緒にいる親友だ。

「おい冬菜、もう俺がやってやるからワックス貸せって」

「うん、ありがと。鏡を見れば見るほど、不安になるんだよねー」

 楓に前髪を直されながらも、心臓は常にバクバク鳴っている。こんなにも気もそぞろになるのには、理由があった。

 私、早見飛鳥(はやみ あすか)には好きな人がいる。高校一年生のときに出会った運命の王子様──高杉宙斗くんだ。

 そういえば、宙斗くんに恋をしたのも今日みたいにポカポカした春だったな。
 私は窓の外へ視線を向けて、ハラハラと散る桜を見る。

「おい、ちゃんとこっち向けって」

「うーん……」

 前髪をセットしてくれている楓に生返事をした私は、蘇る初恋の記憶に想いを馳せていた。

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