キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 挙動不審だった件については、明日ふたりから事情聴取を受けるだろうが致し方ない。今はいろいろ緊急事態だ。

 別に運動が得意でもない私は、よろめきながらあのお店の前にやってくる。そこに彼の姿はなくて、ホッとした。

「やっぱり見間違いだったかぁ~。こんな可愛いを取り揃えたようなお店に、あのクール王子がいるわけな……い」

 そこまで言いかけて、私は口をつぐむ。お店の中、ちょうど私の目の前でウサギとクマのキーホルダーを両手に持ち、真剣に悩んでいる様子の宙斗くんの姿を目撃する。私はおもむろに店内へと入り、彼のうしろにポジショニングした。

「ちょっと、そこのお客さん」

 彼の肩に手をかけて、そう声をかけた。

「はい……あっ!?」

 振り返った彼は、私を見て驚愕の表情を浮かべる。

 ――現行犯逮捕だ。私は無言で彼の手元を指さし、どういうことか説明して、とばかりに凝視する。

「なんでここにいるんだよ」

 視線を明後日の方向へ向けたまま、八つ当たりをしてくる宙斗くんを私はキッと睨む。

「そんなことは聞いてません」

 私はただ、理由を知りたいだけだ。

 女の子が嫌いで、可愛いものが好き? ますます、高杉宙斗という人がわからない。

 宙斗くんはしばらく渋っていたけれど、ついに決心を固めたのか不本意だという顔で口を開く。

    

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