キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 私はお箸を唇に当てたまま、おずおずと声をかける。宙斗くんは黒豆を器用にお箸で挟み、口に運ぶ途中で私に視線を向けた。

「なんだよ?」 

「なんで、おせち料理?」

 そう、今は五月だっていうのにメニューがすべてお正月に食べる縁起のいい食べ物ばかり。美味しいので別に構わないのだが、どうしても突っ込まずにはいられなかった。親友ふたりも相当な変人キャラなので、これはもう性分である。

「気持ちの問題だ。難易度が高くて手間がかかるほど燃えるからな」

「宙斗くん、本当に職業病だね」

「どうせ作るなら、あっと驚くような作品を作りたいだろ」

 彼の中で料理は作品らしい。宙斗くんらしいな、とクスクス笑ってしまう私を見た彼は黒豆を口に入れると片方の口端を持ち上げる。

「お前相手だと、作りがいあるな」

「え?」

 なにそれ、すごくうれしいんですけど。なら、これからも隣にいて、こうやって手作りお弁当食べさせてね……なんて。欲張りにもそんなことを考えながら、私は期待を込めて宙斗くんのほうへ身を乗り出す。

「ねぇなんで? なんで、私相手だと作りがいがあるの?」

「馬車馬みたいにモリモリ食うから」

「……うん?」

 どういう意味? 私が思っていた答えと違う。少しは私のこと、気に入ってくれているからだと思ってた。

「でも、馬車馬って……」

    

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