天秤に、隕石。

殴られた唇が、裂けて痛い。

やめてくれと云ったところで、なぜ?と聞かれると、なぜだろう?と答られなくて、抵抗するのをやめた。

「まとも」に生きるのが面倒だから、毎日殴られて、罵倒され、奉仕する日々を過ごしていたが、それも面倒だと気付いてしまった。

嗚呼、面倒だ、死のう。

だが、死ぬ前に「女」として、快楽を味わっておこうかと思い、抱いてくれる男を適当に探すことにした。

私は、「女」に生まれ、対抗する腕力も無ければ、説き伏せる学も無いのだ。貞操観念だって、無くても構わないだろう。

自ら天秤に乗せて計り間違えた、努力や誠実さが、齎した結末だ。理解した上で、私は無責任な女だ。哀れでは無い。


夜の街を歩く。

ミニスカートに、胸元の開いた服を着て、だらしない色の口紅を塗り、鼻につく香水を振り撒けば、「無責任な女」の完成。


さて、どいつだ。


真面目そうな男は駄目。

しのごの言わずに、行為だけ済ませ、行きずりの女の死に、いちいち苦しまない男が善い。
でも茶髪や金髪は嫌だ。好みじゃ無い。

選り好みしているうちに、どうでも良くなって、声をかけてきたイカれた色の髪の男とホテルに入る。

冥土の土産にセックスさせて悪いな、でも快楽の代償は本来平等であるべきだよな、と考えながらシャワーを浴びたら、お湯が熱くて唇がジンジン痛んだ。
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