東大寺 瑠璃子
極天院
宮中で仲良くなった美しい女官の花野中菊子(はなのなかきくこ)姫がお仕事中に倒れ、瑠璃子姫は部屋で看病していました。
「大丈夫?」
「ありがとう。あなたは美しいから気をつけてね。」
「誰に?」
「極天院路支(きょくてんいんみちつか)と極天院長住(きょくてんいんながずみ)親子よ。男女かまわず手籠めにして捨てるの。私、中之内清麿(なかのうちきよまろ)様と婚姻予定だったんだけどあの親子に手籠めにされて・・・清麿様に申し訳なくて・・・。」
瑠璃子姫は極天院と聞いただけで激しい怒りが湧き上がってきました。さらに菊子姫が手籠めにされたと聞いて瑠璃子姫は気がついたら自分の短刀を抜いていました。
「極天院・・・!」
瑠璃子姫の激しい怒りが伝わってきて菊子姫はびっくりしてしまいました。
「瑠璃子・・殿!?」
「・・・ごめんなさい。極天院と聞いただけでなぜか激しい怒りが湧き上がって、菊子殿がされた仕打ちを聞いて極天院殺してやりたいって思ったの。」
「瑠璃子殿・・・。お気持ちだけで充分なぐさめられました。ありがとう。懐妊しないように薬も飲んだから大丈夫よ。」
そう言って菊子姫が涙を流すとつられて瑠璃子姫も涙を流しました。
< 10 / 28 >

この作品をシェア

pagetop