さよなら、センセイ
1.高校教師
これほど、綺麗に姿が消せるものなのか。


彼女の携帯は繋がらなくなった。
アパートにも行ってみたが、もぬけのカラだった。

こうなって初めて、彼女の孤独を知る。友人と呼べる人もいない。姉とも絶縁状態。
実家の住所も連絡先も知らない。

昔アルバイトをしていたプールにも行ってみたが、現在は閉鎖されていた。



今まで一体、恵の何を見てきたというのだろう。
なぜ、彼女はヒロの元を去ったのか。



丹下広宗(たんげ ひろむね)、皆はヒロと呼ぶ。
4月から高校三年生になるという彼の春休みは、消えた恋人探しで終わった。

消えた恋人、若月恵(わかつき めぐみ)は、ヒロの家庭教師だった。4月から社会人になる…はず。



ーーさよなら、ヒロ。



彼女は、突然、ヒロの前から消えた。

社会人になる自分は、高校生とは付き合えないと言って。


さよならと告げた彼女の顔は、見たこともないほど無表情で。
嘘のつけない彼女の精一杯の強がりだと、すぐにわかった。

いつでもまっすぐで、
感情が豊かで、純粋な心を持つ彼女。
あんな顔が出来たことに驚き、戸惑い、
すぐに追いかけられなかった。



メグ、君は今、どこにいる?
淋しくて泣いてやしないか?

俺は毎日泣いてる。
君がいないなんて、淋しすぎる。

君を嫌いになればいい?憎んだらいい?

無理だよ。だって俺は



君が好きだから。



< 1 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop