さよなら、センセイ

未来





『次のあの人は今は、こちら!
覚えていますか?パリコレのモデルを務めたこともある、AYUMIです。
彼女はなんと!現在は久坂環境大臣夫人なんです』

テレビに久坂歩の姿。
若かりしモデル時代の写真のあと、年齢以上にやつれた現在の彼女がインタビューを受ける姿がうつる。

「うわ、姉ちゃん、見て!
これ、AYUMIのファンだった人が見たら、ガッカリだよ」

リビングで、テレビを見ていた長男孝弘(たかひろ)がつぶやく。

「誰でも歳は取るんだから、しょうがないでしょ。

あ、ね、それよりほら、これ見て!
お父さんと、一条のおじ様!おじ様、やっぱり、カッコいい〜」

孝弘の姉、初音(はつね)が手にしているのは、経済雑誌。

“日本の社長会談第三回
一条拓人氏×丹下広宗氏”

雑誌の表紙は、一条拓人と丹下広宗の笑顔のツーショット写真が飾っている。


「また、転職?今度は、どこ?
そう、うん。ヒデには、向いてると思うよ。
…わかった。じゃ」

電話しながら、リビングに現れるヒロ。
電話を切ると、大きなため息をついている。

「秀則おじさん、また、辞めたの?これでいくつめ⁈」

「さあな、いちいち数えてられないよ。
しかも、また、離婚するんだと」

「呆れた。離婚は、3回目だよね」

うなづいてヒロは電話をテーブルに放り、リビングを見渡した。

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