さよなら、センセイ
6.告白

その夏は、水泳部の練習にヒロの個人授業もあり、恵は実家に帰らなかった。
両親はもちろん良い顔はしなかったが、恵は教師としてはもちろん、1人の女としてもヒロから離れたくなかった。

夏は駆け足で過ぎていった。

ヒロは、予備校の夏期講習に、高校の夏期集中進学講座の参加(これは恵も参加していたが)と、まさに勉強漬け。
恵の部屋に来る時も参考書持参でやって来るくらいだ。
しかも、秀則の事件以来、ほぼ毎日恵の部屋にやって来た。

ヒロはいっそ同棲したいと申し出たが、恵が頑として首を縦に振らない。

ヒロはまだ学生だから。
それに丹下の家では母が1人ヒロの帰りを待っているはず。せめて学生の間くらいはきちんと親の元に帰りなさい、と。

忙しい父や兄はほぼ家にいない。寂しい母のことまで気遣う恵の優しさに、ヒロは同棲をあきらめた。

ならば、恵を丹下の家に住まわせようかとも思ったが秀則の舌舐めずりが聴こえてきそうなので、諦めた。


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