さよなら、センセイ
7.信じること

光英学院高校の文化祭当日。

水泳部は1、2年生が中心になって焼きそばの屋台を出店している。

恵は職員室で雑務をこなしながら、時折窓の外を見て文化祭の雰囲気を味わっていた。



「こんにちは」

その時、職員室に1人の男性がやってきた。

「あっ!これはこれは一条君」

弾けるように立ち上がったのは教頭だ。

「お久しぶりです、先生。時間が取れたので、久しぶりに文化祭を見に来ました」

「そうですか!
今、校長室にご案内しますね。

えーっと、あ、若月先生!
校長室にお茶を三つ」

「わかりました」
と恵は立ち上がった。

その時。

「…?
若月、さん…?若月恵さん…だったね?」

名前をフルネームで呼ばれて恵は、来客の顔を確認した。

「あっ!

一条…拓人さん。
ご無沙汰しています。私のこと、覚えていただいてたのですね」

忘れもしない。
ヒロと付き合うか悩んでいた時に、偶然ブティック『JUNN』で出会った、ヒロの先輩。

ヒロは最高の男だからと、恵の背中を押してくれた人。

「これは、流石に驚いたな…

校長に挨拶した後、少し話がしたいな。
そうだ、若月さん。
文化祭、案内してくれませんか?」

「はい、勿論です。いつでも声をかけて下さいね」




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