さよなら、センセイ


校長は、それをじっと見る。
だが、受け取らない。

「そんな事をすれば、若月先生、あなたは
生徒をたぶらかした、という烙印を押されて
もう教師は出来なくなりますよ。
あと半年、大人しくさえしていれば、丹下も卒業。と、なれば、咎める者はいなくなります。

落ち着いて下さい、若月先生。
私はあなたにどうか教師を続けていただきたいんですよ」

冷静に、穏やかに諭す校長。
思いもかけず恵を擁護する校長に、教頭も山中も驚いている。

「校長!いいじゃないですか!
丹下に何かしらの処分を下せば、丹下の家が黙っていますまい。
たかが産休代替講師一人のクビで、全てなかったことに出来るのですから!
丹下の名前は出さず、若月先生一人に全て背負って頂きましょう!」

教頭は悲痛な声を上げる。


その時だった。

コンコン、とドアがノックされた。


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