偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「それ、本当に掛けるつもりですか?」

「当たり前だ。そのために持ってきたんだからな」

「あとで後悔しても知りませんからね」

「後悔? 望むところだ」

 真史さんはそう言ってイジワルな顔を見せると、ふんと偉そうに鼻を鳴らす。

 地元の情報誌で読んだことがある。ここで南京錠を掛けた人の恋愛成就の確率は、かなり高いと。『こんなつもりじゃなかったのに』とか、あとで吠え面をかいても知らないんだから。

 「行くぞ」と出された手に、自分の手を重ね立ち上がる。そのまま手を引かれ階段を上がると、数えきれないほどの南京錠が掛かったモニュメントが目に入った。名前と一緒に書いてあるメッセージを見ると想いが溢れていて、何組もの恋人たちがここに訪れ愛を誓いあったんだとたんだと感慨深い。

 こんな素敵な場所に偽装恋愛している私たちが、真史さんが手にしている南京錠を掛けてもいいんだろうか。

 『本当に掛けるんですか?』と問うように、真史さんを見上げた。そんな私の気持ちが彼に通じたのか、握られている手に力が込められる。



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