夜をこえて朝を想う
第23話

side M

午前中にお弁当を持って

ピクニックに出掛けた。

公園の芝生に、レジャーシートを広げる。

日向。

太陽ガンガンの。

もうすっかり夏だなぁ。

天気がいいとより一層。

簡易テントがあちこちで開く…

家族連ればかりだ。

紫外線対策で木陰へ。すいません、日向とか言いながら、日陰入りまーす。

お弁当を広げると

「得意じゃないって…」

彼が驚いたように言った。

「うん、得意じゃない。はい。」

そう言って割り箸を渡す。

「頂きます。」

一口食べて。固まる彼に

私も同じ物を一口。

微妙な顔をゆっくりと上げると、同じく微妙な顔した彼と目が合った。

味…うっすー…

「…見た目が、旨いな。」

「そう、盛り付け、すっごい得意なの。」

「味見は?」

「お腹いっぱいになるから、しない。食べるときの楽しみにしたいの。」

「あ、これ旨い。」

「ウインナー…」

切って炒めただけじゃん?

「くっ」

ん?

「くっくっく…あはは!」

声を、出して笑い出した。

だから…得意じゃないって…

そっぽを向く

それに気づいた彼が

「作ってくれて、嬉しい。」

と、慌てて言った。

「得意じゃないって言った!盛り付けが好きなの!」

そう、いつも見た目は素晴らしいんだけどね。

あ、それこそインスタ向き?

同じことを考えてたらしい。

「あ、ほら、インスタ映えするよ。」

そう言って、携帯で写真を撮った。

「そんな、二宮くんみたいな事を。」

「はは!そうだな。フォローしてやるか?」

「検索したら、出るかな。」

SNSやってないって言ってたけどなぁ。

あ、じゃあ、あの写真どうしたんだろ。

「あー、どうかな?アカ名、本名かも分からんしな。」

「公式とかで出てたりして。」

ていうくらいのお洒落なイケメンだよね。

「下の名前は?」

「えーっと…」

電話帳から名前を…スマホをスクロールして確認…

「あ、孝之。案外、普通の名前。」

「……。」

あれ?聞いたことあるな、どっかで。

「いた?」

「いや、探してない。」

「なに、それー。」

なぜか、暫くそっぽを向かれていた。

だけど、お弁当は完食してくれた。

優しいんだから。

< 134 / 146 >

この作品をシェア

pagetop