夜をこえて朝を想う
第4話

side S

その次の週、2人揃ってうちにやって来た。

吉良君と中条さん。

今日は、商談ではなく

うちの社員数十人相手に、研修。

各部署から数人選抜した社員が参加する。

…男ばかり。結構な人数に晒してしまうことになる。彼女を。

案の定、社員の間を歩く彼女に多くの視線が集まる。

いい女なんだよな…歩く姿も。全部。

わざと質問してる奴もいる。

まずいな…

流石に女性相手に無茶をする奴はいないと思うが…

「よし、10分休憩。」

そう言うと、彼女に話しかけた。

わざと。聞こえるように。

「ねぇ、中条さんて…独身?」

「ええ。」

「恋人は…?」

ここで“いる”と、言ったら皆に伝わるだろう。

だが、予想に反して

「…いませんわ。」

そう言って、彼女は俺ををゆっくりと見た。

綺麗だな、やっぱり。

だから、こそ。

「じゃあ…食事に…誘っても?」

「ええ、もちろん。」

「…予定…どうしよっか。」

また、連絡する。そう含ませて終わるつもりだった。

しかし、彼女から返って来た言葉は

「…いつでも…今日でも…構いません…私は。」

俺をを真っ直ぐ見たまま答えた。

意外な返答に、俺が言葉に詰まった。

これに対する答えは用意してなかったな。

ところが、それに…

「麗佳さん、今日、社内ミーティング。」

割って入ったのは…

彼女の同僚の…イケメンだ。

まさか、彼が食い付くとは…。

驚きで、彼を見た。

ああ、なるほど。

面白い。

「はは、残念。また、連絡します。」

そう言って、休憩を終えた。

ミーティングなんて、そんなに遅くならないだろ。

それからでもいいけど?

可笑しい。…可愛いな。

他の社員への牽制。それさえ出来たら満足だった。

俺と張り合ってまで彼女に手を出す奴はいないだろう。

でも、このイケメンとデキてるってので良かったな。

あ、駄目か。彼は結婚してる(てい)だったな。

ま、同行も終わるし、俺にしといた方が何かと好都合か。

これですぐに、噂も回るだろう。

とりあえず、手は打った。

それにしても…

彼も遂に…始動か。

いいね、楽しくなりそうだ。

しかし、綺麗は綺麗だけど…意外だな。

吉良くんの反応に、彼女にも興味が沸いた。

まぁ、行ってみるか飯くらい。

研修が終わると

「連絡する。」

彼女に、そう耳打ちした。あえて、彼の前で。

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