夜をこえて朝を想う
第5話

side M

「ごめんなさい。心配かけて。」

そう言って梓は、話し始めた。

梓にも知って欲しかった。…そしたら今度は…幸せになれるかもしれないから。

彼が、吉良くんが…こんなにも梓を大切に思っていた。その事を。

恐らく、大学時代の吉良くんの友人に会ったことによるフラッシュバック。

今日は本人に会って、話も出来たのだから、大丈夫でしょ?

「返事だけは、してよね。」

最後に梓にそう言って

梓も頷いてくれた。

路線が別の梓と別れて、吉良くんと駅に向かった。

「今日は…よく眠れそう。」

そう言って空を見上げるとまた涙が溜まる。

それに気づいた吉良くんが

「お前ねー、だから…」

「ごめん。もう、ダメだ…最近。」

「あ!」

思わず、声が出た。

「何だ?」

「今…気付いた。…2人になりたかったよね!?邪魔だった、私。ごめん、気が利かなくて!あー、こんなんだから彼氏もできないんだー。」

…そうだ、状況をよく見ないから

邪魔したり、間に入ったりしちゃうんだ。

「くっくっ、馬鹿だなぁ。関係ねーわ。湊が居たから、梓も楽しそうにしてくれたんだろ。俺と2人なら会ってもくれなかったかもよ?」

「いや…でも…やけぼっくいに…」

「ないわ!」

ないのか。

「そうか…。ごめん、次は遠慮する。」

「いや、次も来て。」

「いいの?」

「いや、助かる。」

「あ!」

「何だようっせーな、夜に。」

「ご、ご馳走様でした。食事。」

「ああ。はい。」

また涙目の私に

ハンカチを渡してくれる。

「私より…女子力ありますね。さすが、美しい人は違う。」

「持って来い!自分で。」

「しっ!夜ですよ。」

そう言った私に

そっと自分のマフラーを巻いてくれた。

また涙が…

「もう、何されても泣ける。」

そう言って笑った。

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