夜をこえて朝を想う
近くのカフェに入ると

「彼から聞きましたか?」

そう、尋ねた。

「…聞いていません。…だけど…知っています。」

彼女は俯いたまま、答えた。

聞いてないのに、知ってる?

それは…無理じゃないかな?

「あの日…何があったかも?」

「それは…」

「知らないでしょう?」

そう言って笑った。

「ごめんなさい。」

まずは謝った。

「謝られる事では…」

「謝らないといけない事なんです。私、吉良くんがあなたと居るの見えてなくて。約束…されてたんですよね?」

「…ええ。でも…」

「彼から聞いてますか?…その解決しないと駄目な事がある…とか…それっぽい事でも。」

「…過去…の事…ですか?」

良かった。それは、話してるんだ。

元カノ話は気分良くないよね。…でも…

「私、吉良くんと同じ大学だったんです。彼は…知らなかったと思いますけど…それで…最近その過去と会うのに、私がお手伝いをしていたわけで…」

ああ、説明下手だな。私。

もう、いいや、言っちゃえ。

大事なのは、今だ!

「簡単に言います。私…彼が引きずっていた…」

「…元彼女さん?」

知ってるのか、元カノ引きずってたこと。

話してるんだ。

幾分ホッとした。

「の、友達です。だから、私の事は彼、最近まで知らなかったんじゃないかな?」

そう言うと、彼女は目を見開いた。

「じゃあ、彼…とは…。」

「気にするに値しない存在です。」

「えっと…」

「その、元カノも吉良くんを引きずっててですね、それを解決するのに…私が橋渡しをした次第。」

「そう…だったんですね…でも元カノさんは…」

「あ、吉良くんもそうですけど過去を昇華出来ていなかっただけで…今も好きなわけではありません。昔、好きだった。彼女も、今は他に好きな人が。」

「じゃあ…」

「ええ。それを、私がちょっとした勘違いで…彼女が、ただ旅行に行ってたのを…行方不明と勘違いし、大騒ぎを…吉良くんも、彼女の今の彼氏も巻き込んで…それがあの日…です。」

顔が熱く、赤くなるのが分かった。

「あなたも、巻き込んでしまいました。

だから、誤解させてしまった事を謝りたくて…最近、取引先の近く…あ、前回お会いした所とか、そちらの会社の回りとかウロウロしてたんですけど

こんな所でお会いできるとは。」

そう言うとチラリと彼女を見た。

様子を伺うように。

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