夜をこえて朝を想う
湊も、忙しいのかなかなか片付かないんだろう。

元々引っ越しは決まっていたのか。

この偶然に嬉しくなった。

もういっそ、うちに来てくれてもいいのに。

まぁ、あの部屋片付けてからだが…。

会社も近い、家も近いとなれば…それもいいな。

湊とは、自然に少し先の事まで考えるようになっていた。

「清水部長って、彼女いらっしゃいます?」

昼休み、一緒に食事を摂った部下からそう聞かれた。

いい加減、社内での女性達にもうんざりしていたし、湊に対しての安心感もあった。

言ってもいいか。

「いる。」

「あ、そうなんだ。作らないのかと思ってました。」

「何でだよ。」

「選びたい放題じゃないですか。まだまだ遊びたいのかなぁって。」

元々遊んでないけど。そんな暇もない。

…それに、社内は勘弁してくれ。

「ちゃんと、付き合ってる。」

「へぇ、じゃあ…そろそろ結婚とか。」

「まぁ、そうだな。考えては、いる。」

勝手に、だけど。

「いいですね。」

それから、噂が回るのは早く

彼女だって言ってるのに話を出す時は“奥さん”とか言い出した。調子の良い奴。

だけど、それで…諦めてくれた奴もいるので

そのままにしておいた。

都合がいい。単に。

…それに否定するのも面倒くさい。

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