夜をこえて朝を想う
第17話

side M

ナンバーを非表示にして、コールした。

「もしもし…。」

「あの…」

「湊!」

「うん。」

「ごめん、えっと…大丈夫だったか?足。」

「要件は?」

「…会って話を。」

「要件言わないなら、切ります。」

「会いに、行くから。」

「あそこ、辞めたの。でね、海外へ行くの。…本当だから。来ても、もういない。」

「何で?」

「建築の勉強。空間とインテリア、色彩もね。」

「やりたいって、言ってたやつだな。」

「要件は?」

「…あれから…会社にも向こうの彼女にも全部バレた。…で、結婚も破談、会社も辞めた。」

自業自得…だけど。

「ごめん。謝りたくて。」

自己満足の謝罪の為に?

「二度と、会いたくない。」

「ごめん。好きだった。それが…傷つけることになって…」

「もう、何とも思ってない。」

「本気だった。」

「知らないよ、そんなの。切るよ。」

「会ってくれないか?」

「私に悪いと思うなら、誠意を見せて。二度と顔を見せないくらいの。」

「…その、通りだ。自分が、わだかまりを解きたかっただけだ。3年分の。」

ああ、この人も苦しんだんだ。3年も。

社会的制裁も受けたのだ

「電話、出来て良かった。ありがとう。もう、会わない。幸せになって下さい。」

「…湊も。ありがとう。」

弱くて、勝手な男。

もう、何の魅力も感じない。

ただ、これで終わってくれるなら。

彼も前を向いて、私なんて忘れてくれれば。

きっと、ここまで言って会いに来るほどの勇気はないだろう。

二宮くんにも、吉良くんにも見られているし。体裁を気にする人だ。

大丈夫だろう。

冷静に見れる。今なら。

馬鹿だったと。

…なのに、こんなにも惹き付けられるのはなぜ。

この男と、同じ様な事をされているのに。

あの人に、だけは。

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