橙色の糸
キキーーーッ!!!

咄嗟に踏んだブレーキによるタイヤの悲鳴と、グルグルと回る視界。

何が起きたかよく分からないままに俺の意識に暗幕がかかった。

「…さん!父さん!!」

___ああ、誰かが俺を呼んでいる。

「…、っかり!!アナタ、しっかりして!!」

___うるさいな…眠いのに。

「…さん!高橋さん、聞こえますか!?」

___そろそろ起きないとかな…

体を起こそうとするが、全身に激しい痛みが走り小さく悲鳴をあげる。

その痛みで、俺は事故にあったことを思い出した。

「意識が戻りました!!誰か、先生を呼んできて!!高橋さん、私の声が聞こえますか?」

「…はい。」

「あぁ、良かった!聴力に異常は無いようですね。」

「…はい?」

そこまで言われて気がついたが、目を開けているつもりなのに視界が真っ暗なのだ。

「あの…目が見えないんですが、これはどういう事ですか?」

本当は知りたくないが、どうしても気になった。

「…今お話しても、貴方が混乱してしまうだけです。今は安静にして回復に務めて下さい。」

目は見えなくても、自分の傍にいるであろう看護師が口ごもったことが分かった。

…でも、今はやはり眠い。

睡魔に導かれるままに俺はもう一度意識を失った。

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