いつか、眠りにつく日2~限定エピローグ~
「輪」

母親が俺を呼ぶときはろくなことがない。
赤本の問題集から意識を戻した俺に、もう一度名前を呼ぶ声が届いた。
前までは返事もしなかったが、最近の俺はちょっと前とは違っている。

「なに」

ぶっきらぼうな返事をして部屋を出た。

階下に降りると珍しく父親もソファに座っていた。
まだ夕方なのにいるなんて珍しい。
冬休みもあと少しで終わる年明け。
やけに寒いと思っていたら、リビングの窓の向こうには珍しく雪が降っていた。

「忙しいんだけど」

「いいからちょっと時間ちょうだい」

やたら最近明るい母親は、俺の反抗期が終わったと思っているらしい。
まあ正直、高校三年生にもなってひねくれているのもどうかと思うし、ふたりにはずいぶん面倒をかけた自覚はある。
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