お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「……わかりました……デート一回で……ちゃんと落としてくださいね?」

渋々つぶやくと、彼は柔らかく目を細めて私の手をとり、その甲に、指先に、手首に、何度もキスを落とす。

もう私は恥ずかしすぎて、真っ赤になって伏せることしか出来なかった。



約束を交わしたあと、ふたり揃って両親のいる個室へと戻った。

戻るなり、彼は「結婚を前提に澪さんとお付き合いさせていただきます」と、畳に手をついて頭を下げたから、双方の両親はもちろん、私自身も度肝を抜かれてしまった。

もしかして、先に親から口説き落とす作戦なの……?

両親は「こちらこそふつつかな娘ですが」と低頭するし、向こうのご両親は結婚にすっかり乗り気で安堵の表情を浮かべている。

「あの……ちょっと待ってください、あくまで、まずはお付き合いから……」

私の制止なんて、誰も聞いてくれなくて、両家の間にはすっかり成婚ムードが漂うのだった。

< 103 / 294 >

この作品をシェア

pagetop