お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
ふたりの手を振り切って、部屋から逃げ出そうと襖に手をかけたとき。

外から数人の足音が響いてきて、障子に影が映った。

どうしよう、もう来ちゃったの……!?

逃げ場をなくし一歩、二歩とあとずさった私は、立ち上がった両親に両脇を囲まれ、不自然なくらいに横一列でぎくしゃくと並んだ。

「失礼致します」

先導してきた仲居によって襖が開けられ、まず見えたのは、ダブルのスーツを着込んだ品のいい紳士。

そして、隣には美しいご婦人。流水模様が描かれた淡いくちなし色の訪問着を着ている。

おそらく年齢から言えば、うちの両親とたいして変わらないとは思うけれど、その身に纏う洗練されたオーラが、若々しく凛として見せていた。

そしてその奥。

「っ!!」

百八十センチは軽く超える長身、スラッとした長い手足、見るものを惹きつける整った顔立ち。

グレーやベージュなど、柔らかな色合いのスーツを着ることの多かった彼が、今日は珍しく隙のないブラックで、身を包んでいる。

三カ月ぶりに再会した彼は、不敵ともいえる表情で静かに微笑むと、私たちに向けて綺麗な姿勢で一礼した。
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