迷惑なんて思ってないよ
俺の言葉を聞かずに荒々しく声を上げてしまうほど追い詰められていた彼女の心っていったい。じゃああの男に見せた笑顔はどっちだったんだ。あれも作り笑顔の一つなのか。
ただ、一つだけ言えるのは怒ってでも構わないから泣いてくれて良かったって事だ。理事長が昔言っていた。“人は泣けなくなったら終わり。泣ける内に泣いておかないと泣き方を忘れてしまう”と。

「そんな事ないよ」

「だって・・・っ、もう聞かなくて良いんだって・・・っ」

母親に何か言われ続けていたのだろうか。例えば、お姉ちゃんなんだから確りしなさいみたいな事を。いつ亡くなったのかまでは分からないけれど、ずっと後悔して生きてきたのかな。
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