天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
ドレスを脱ぎ、着て来た服に着替えると、バックをあさりカードを取り出す。

バキッ。
力任せにカードを折った。

「あああー」
スタッフの悲鳴。

私はかまうことなく、カードを折り続け、近くのゴミ箱に投げ入れた。
パパのカードで支払いしたことがそんなに不満なら、これで文句ないでしょう。

私にだって、泰介の気持ちがわからないわけじゃない。
でも、今ここで言わなくたって・・・

すると突然、
パシッ。
音がするほどの勢いで腕を掴まれ、
「何やってるんだ。いい加減にしろ」
叱られてしまった。

立ち尽くす私。
泰介がゴミ箱からカードを拾い上げ、
「何でそんな子供じみた行動に出るんだよ」
呆れた顔。

私にだって非常識な行動だとは分かっている。
でも、悔しくて、我慢できなかった。

「カードはお父さんにお返しした方が良いと思うけれど、どうする?」
「自分で返します」
「これもお金だからね。粗末に扱っちゃダメだ。ゴミ箱に捨てるようなまねしたらダメだよ」
分かったねと念を押され、素直に頷くしかない。

すこしづつ冷静になった私は、ここから消えてなくなりたかった。

いつまでたっても私は子供で、きっと泰介にはふさわしくない。
そう思ったら、また、またまた、逃げ出してしまった。


「爽子っ」
駆け出していく私の背中に声がかかったけれど、仮縫中のタキシードを着た泰介が追いかけてくることはなかった。
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