天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「もう、パパが倒れたって嘘つくなんて」
爽子の非難するような口調。
「仕方ないじゃない。爽子が電話に出ないから」
「信じられない」

それまで俺は黙って聞いていた。
よその家に勝手にお邪魔して、ご両親がいらっしゃるのに俺が口を出すべきじゃないと思っていた。

しかし限界だ。
甘すぎるご両親にも、わがまますぎる爽子にも。

俺は立ち上がり、ゆっくりと爽子に近づく。

パンッ。
爽子の頬から乾いた音が響いた。

俺は生まれて初めて、女性に手を挙げてしまった。

「いい加減にしろ。連絡先も言わず無断外泊をしたのはお前だろ。まずそのことを謝れ」

「・・・」
唇をきゅっと結んで、爽子が俺を見る。
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