絵本彼氏と年上の私。



 「この仕事は知られないと意味がない。まずは、何でもいいから自分の作品を知ってもらう必要がある。………そのためには、何でもやって見る事がいいだろう。君が受けたキャラクターデザインもそうだ。そこから、君の絵が気になって作品を知る人も増えるだろうね。」
 「…………はい。」
 「インタビューも同じだよ。君は容姿端麗だ。きっと、その作品の女性ファンが増えるだろうね。かっこいい、素敵……この人は何をやってる人なんだろうか。そうやって、作品を知ってもらえるのも、1つのきっかけだよ。」
 「それはわかってるつもりなんですけど………。」
 「顔で騒がれるのは苦手かい?」
 「………そうですね。」


 キノシタが話している事は最もな事だ。
 クリエーターは有名になり、知ってもらい人気にならなければ仕事が来ない。本来ならば、どんな手でも宣伝する必要がある。もちろん、ひっそりとやりたい人もいるだろうが、それで暮らしていけるのは、よっぽどの人ではないと無理だ。
 そうなれば、白は容姿を売りにしてでも、自分をアピールした方がいいのだ。
 一般的に好まれる容姿に生まれた白は、恵まれている方なのかもしれない。けれど、普段から周りに騒がれるのが好きではない白にとっては、これ以上になると生活に支障が出るのではないかと不安になってた。
 1度のインタビューで、そこまで売れるとはもちろん思っていない。けれど、有名ゲーム、そして有名なゲーム雑誌に出てしまえば、ネットでも拡散され、いろいろな所で顔が公開される事になるだろう。

 百歩譲って、白自身はいいとして、しずくに迷惑はかからないだろうか。一緒に歩いていて嫌な思いをさせないか。それが心配だった。


 考え込む白を見て、キノシタは苦い顔をしてまた話し掛けた。


 「いろいろな考え方がある。君の思いもわかる。けれど………私はいいチャンスだと思う。君がこれかは活躍するには、少しぐらい挑戦してみてもいいんじゃないかな。」
 「…………。」
 「大切な恋人にも相談してみてもいいと思うぞ。まぁ……悩め、青年っっ!!」


 そう言って最後は、大きく笑いながら白の背中をバシバシッと叩いた。

 そんな痛い励ましを受けながらも、キノシタの気持ちはよく伝わっていた。
 ふざけたり、からかってくる事が多い恩師だったけれど、いつも大切な事を教えてくれる。白にとっては大切な人だ。


 売れるために生活を犠牲にするのか。
 それとも、平穏な生活を優先するのか。

 白は、また悩む日々が続くことになるのだった。


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